ブログは自己顕示欲

鬱になった妻(スーザン)の記録をしていくブログです。

7月15日 急変

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 ホテルで朝食をとり、チェックアウト。梅田に戻り阪急に乗り、スーザンの母方の祖母の元へ。老人ホームで暮らしているのです。スーザンの実家は滋賀県なのですが、いつも初日に大阪まで行き、祖母の元を訪ねています。その後で実家に行くのがパターンになっています。
 祖母は相変わらず元気そう。祖母にあらかじめ現像しておいた写真を渡します。最近はiPhoneなどで撮った写真をすぐにプリントできるので、大変便利です。私とスーザンと、そしてスーザンの妹と。写っている写真をひと通り渡します。
 スーザンは一時期、親元を離れて祖母と一緒に暮らしていた時期があったため、祖母が大好きです。また、祖母もスーザンのことをかわいがってくれています。部屋のテレビのところに、以前渡してあったスーザンの写真が飾られていました。今日渡した写真もそうしてくれるでしょう。
 一年にそう何度も来れるわけではありませんが、元気でいてくれるうちは会いに来続けたい。そういう大切な祖母です。
 そして新快速に乗り、いよいよ実家へ。駅につくとお母さんが迎えに来てくれています。病状のことなどは以前からお伝えしていましたので、お母さんもとても心配していました。娘さんの顔を見てさぞかし安心されたかと思います。
 夜、仕事からお父さんも戻り、つかの間の団欒です。スーザンと妹。娘二人が上京しているので、家には夫婦二人。娘が帰ってきての食卓はさぞかし楽しいのでしょう。お父さんもビールが進みます。
 しかしその平和な状況が一変します。
 「うっ」
 急にスーザンが倒れこみます。のどに何か詰まらせたようです。慌てて駆け寄り、とりあえず口の中に指を入れます。窒息が怖いからです。苦しいのでしょう。無意識にスーザンは噛み締めます。咄嗟に入れた私の指が噛みちぎられそうです。
 スーザンの顔色がみるみる青ざめていきます。酸素が行き渡っていないのでしょう。危険な状態です。
 お父さんに救急車を頼み、私とお母さんは背中を叩くなどするとともに、気道の確保につとめます。しばらくして顔色は戻り、呼吸も確認できたので一安心。最悪の事態は防げたようです。
 見ると前歯が一本落ちています。スーザンの前歯です。倒れこんだ時に何かにぶつけ、その衝撃で折れたのでしょう。
 しばらくしてお父さんが戻り、救急隊員の方が家に入ってきました。ご両親には搬送先の病院が決まったら連絡してお迎えに来てもらうことにし、私が救急車で同行することにします。
 スーザンはまだ何が起きたかわかりかねている様子です。倒れた記憶、呼吸困難になった記憶、歯が折れた記憶。すべてない状態。そして救急車が来ている。自分が担架に乗っている。しかも前歯もない。そういった状況に少なからずショックを受けているようです。
 手をとり、足をさすり、スーザンに声をかけます。
 「大丈夫だからね」「心配いらないからね」
 思えば5ヶ月前、同じように救急車で搬送されました。
 「ごめんね」
 スーザンは詫びます。病院までの道のりがとても遠く感じられます。
 とはいえ、状況は前回と違い、とても明確でした。ものを詰まらせたことによる窒息。あとは他の要因があるかどうか。
 診察を先生にお任せして、待合室へ。ご両親に電話し、搬送先を伝えます。三十分ほどでご両親が到着します。
 さらに三十分、そして一時間。そのくらい待ったでしょうか。先生に呼ばれて中に入ります。現状には問題はないこと。てんかんなどの脳神経外科の領域の確認が必要と思われるので、明日検査を受けて欲しいことを伝えられます。
 スーザンは何か照れくさそうにしていました。気持ちが落ち着いてきたのでしょう。柔和な表情に戻っています。
 手を握り、ご両親のところに戻り、車で実家に戻ります。とりあえず何事もなかったことがすべて。倒れて顔が青ざめていったときは最悪の事態も覚悟しましたが、まずは何もなくて良かった。私にとってスーザンがすべて。スーザンが生きていればそれで良いのです。生きていれば。