7月16日 価値ある平穏
怒涛のような一夜が明けました。お母さんと私、そしてスーザンで病院に向かいます。昨日、救急のお医者さんから言われた脳神経外科の検診を受けるためです。
実家から車で十五分ほど走った隣町に病院はあります。比較的新しく、そして大きく、多くの患者さんがいらっしゃいます。
三十分、一時間と今日もひたすら病院で待ちます。その結果、特に異常はありませんでした。とりあえず一安心。昨晩の昏倒は誤飲が原因ということが明確になりました。病気由来の症状ではなかったのでホッとします。
スーザンはすっかり疲れてしまったようで、病院から帰ると眠ってしまいました。私はお母さんと買い物に出かけます。丁度お母さんが離れのエアコンと、ノートパソコンを買おうとしていたので、家電量販店に寄り、機種選びなどを手伝います。幸いにして予算の範囲内の、希望通りのものが双方見つかりましたので購入します。私は比較的家電などに詳しいと思われているようで、実家に帰省するたびに頼りにされています。
とはいえ、こうして頼りにされることはありがたいことです。私は両親とはいろいろあって、絶縁状態になっておりますので、家族といえばスーザンであり、実家に住まうご両親と、東京で暮らす妹さんと、大阪にいる祖母になります。苗字も結婚してスーザンの姓にしています。特に養子縁組などはしておりませんが、名実ともにスーザン家の一員です。
家族の一員として頼られることは実にうれしく思います。それだけに、スーザンのことをなんとかしてあげたい。親御さんがスーザンを愛していると同じかそれ以上に私も愛したい。親御さんにスーザンの笑顔をもっともっと見せてあげたい。そういう気持ちです。
買い物を終えて帰るとスーザンはまだ寝ています。寝顔がとても愛おしい。
夜、お父さんが帰宅し、改めての一家団欒です。
「ゆっくり食べるんだよ」
スーザンが恥ずかしそうに頷きます。みんなで夕食を食べる。とても平凡な光景ですが、急変した昨日のことを考えると、平凡な時が過ごせるだけでありがたいのかなと思います。いつ何が起きるかわからない。それが人生。であるならば、少しでも平穏な時間を過ごしたいし、その平穏を何としても守りたい。そう思ってなりません。