3月28日 お医者さんとの相性
この日はスーザンの体調が非常に良さそうでした。朝起きてご飯を食べ、お風呂に入り、身だしなみを整え、おしゃれをして出かける。
「ねえ、おかしくない?」
洋服のバランスなど、しきりに確認してきます。
「大丈夫。似合ってるよ」
本当に似合ってます。おめかしをしたスーザンはいつも以上に魅力的に見えます。
11時の予約に合わせてお医者さんに。私がそうしたようにアンケートを記入し、臨床心理士と面談し、先生と話します。
診断を受けたスーザンは、何故かひどく落ち込んでいる様子でした。診断を終えたタイミングで少し私のお腹が痛くなったので、「トイレ行っていい?」と私が言うと「早く帰りたい」とうつむいて言います。
その様子が心配だったので、急いで外に出ると、スーザンは疲れきってしまいました。
「ねえ、なんであそこがいいと思ったの?」
「なんで?」
「どこが良かったの」
「私、全然わからない」
「ああ、死にたい」
「帰りたくない」
「死にたい」
「あのビル行こう」
「あのビルから飛び降りる」
「私、死ぬならあのビルから飛び降りようって決めてたの」
「もうやだ」
「死にたい」
私は良かれとお医者さんに連れて行ったつもりでしたが、どうやらお医者さんと合わなかったようです。
「なに言われたか全然わからない」
「なんなの?」
「どうすればいいのかわからない」
「どうしてあそこに連れて行ったの?」
「なんで?」
パニックを起こしていました。全身の力が抜け、家まで歩いて戻るのもしんどい様子でした。
「せっかくいい気分でお出かけして、おいしいご飯食べたり、公園行ったりしようと思ってたのに、もう台無し」
「なんで?」
「どうして?」
「なんであそこに連れていったの?」
自分は問題ないと思ったお医者さんでしたが、なにかがスーザンと合わなかったようです。 どうにか家まで戻り、とりあえずソルピデムを飲んで寝ることにします。良くなる期待を持ってお医者さんに行きましたが、うまく行かなかったようです。
気が付くと私も眠っていました。二人して夕方に目覚めます。
「ごめんね。何だかよくわからなかったの」
スーザンは時折二重人格のように、人が変わったような言動を取る時がありました。今回のは正にそういう状態でした。
「いいんだよ、気にしないで」
「うん、ありがとう。でも、本当に何を言われたのかわからなかったの」
いろいろなことを聞かれ、気分的に追い込まれてしまったようです。
処方されたお薬を見ると、抗うつ剤と、抗うつ剤による吐き気などを抑える薬でした。
デプロメールとドンペリドンが処方されています。こちらは朝夜一錠ずつ。また入眠用にゾルピデムも出されています。
スーザンは恐慌を起こしたことが嘘のように穏やかになっていました。あれは何だったのでしょうか。本当にスーザンなんでしょうか。別人? 別人格?
しかし恐慌を起こしたのは紛れもなくスーザン。穏やかな顔をして私のそばにいる最愛の人を同じ人。
快方への第一歩とお医者さんに行きましたが、早くもその一歩目でつまずいてしまいました。
「どうすればいいのかわからない」
ごめんね、スーザン。僕もなんだ。