ブログは自己顕示欲

鬱になった妻(スーザン)の記録をしていくブログです。

4月1日 二つ目のわら

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 前回お医者さんに行った時のように、今回もスーザンの調子は良さそうです。
 朝、快適に目覚め、時間に余裕もあったので、少し早めに家を出て、川沿いの桜を見ていくことにしました。
 タイミング的に丁度のタイミング。まさしく「満開」という状態で、とてもきれいな眺めです。
 「きれいだね」
 「来て良かったね」
 スーザンも満足気で、そばにいる私もうれしい。スーザンの笑顔を見ていると、疲れが吹き飛ばされますし、日々のもやもやがなくなります。自分はスーザンの笑顔を得るために生きているんだなあとしみじみ思います。自分が生きている理由はスーザンにあるんだなあと。スーザンは自分のすべてなんだなあと。
 まずは快調な出だし。しかし前回もお医者さんにかかるまでは良かったのです。問題はここから。
 自宅最寄りのJRの駅から2駅移動。駅からほど近い場所に今回のお医者さんはありました。きれいな作りで、しっかりとしたお医者さんだなあという印象を持ちます。
 前回もそうだったように、まずはアンケートのようなものを記入します。黙々とスーザンが記入し、アンケートを提出。しばらくすると中に呼ばれます。
 10分は経ったでしょうか。しばらくしてスーザンが私を手招きします。夫婦でお話を、ということになったようです。私も診察室に入ります。
 中には女性のお医者さんがいました。素朴な感じの、とても優しい印象の先生です。
 簡単な挨拶を交わし、お話をうかがうと、やはり先生もうつ病ではないか? という所見を得たようでした。
 「まずは生きていくことが大事です」
 「こういう状態になると、死なないことを優先しなければなりません」
 先生ははっきりと言いました。私も恐れているのは自殺です。
 「周りも気分転換をさせたがりますが、それは禁物です。無理に出かけさせると疲れてしまいます。まずはゆっくり休みましょう」
 心当たりのある話です。スーザンの気が紛れるように「お散歩行く?」「お買い物行く?」とついつい誘ってしまいますが、それは逆効果だと言うのです。
 「心と身体をまず安め、回復させましょう」
 納得のご意見です。
 「あの、私、カウンセリング受けたいんです。何が原因でこういうことになっているか知りたくて」
 とスーザンが言うと、先生はそれにも反対のようでした。
 「そういう気持ちになるのはよくわかりますが、まずは休養を優先しましょう。カウンセリングでいろいろ心の内側を話そうとすると疲れてしまいます。今は病気になった理由を調べるより、病気そのものの回復を優先しましょう」
 この考えにも私は賛成です。まずは休養。原因究明は余裕が出てから。
 「甲状腺の異常でもうつ病に似た症状が出る場合があります。血液検査でそれをまず調べてみましょう。次回採血にいらしてください」
 スーザンの症状が甲状腺の異常による肉体的なものなのか、それとも精神的なものなのか。まずは血液検査が分かれ目になるようです。
 診察を終え、病院を出ると、スーザンはとても落ち着いていました。今回は先生のお話も理解でき、相性も良さそう。溺れたスーザンの目の前に現れた二つ目のわらは、それなりに手応えのある、しっかりとしたわらでした。
 お薬は前回同様、デプロメール、ドンペリドン、ゾルピデムと、不安になった時用の頓服としてソラナックスを処方されました。

 お薬の種類が日に日に増えて行きますが、それだけ症状が具体的になり、それに合わせたお薬が明確になっているということなのでしょう。
 「桜きれいだったね」
 家に帰るとスーザンは何度も何度も繰り返します。
 「また行こうね」
 来年も、そしてその次の年も、ずっと。